KOBE MEETS SLOW FOOD

有馬山椒

written by
Aya Asakura
photo by
Aya Asakura

歴史と風土

有馬温泉では、かつて多くの旅館主が六甲山に野生の山椒の木を持ち、採集した有馬山椒で客をもてなしていました。有馬の人々にとって、山に入って山椒の花や実をとり、風味や香りを嗜むことが季節ごとの伝統だったのです。山椒を使った料理に『有馬煮』や『有馬焼』の名がつくほど、有馬の地と所縁の深い有馬山椒の伝統は、しかし、山に入る人がいなくなり、いつしか途絶えていました。

今、この伝統を復活させる取り組みが広がっています。リーダーである老舗旅館「御所坊」十五代目当主の金井啓修さんは、御所坊に代々受け継がれている秘伝のレシピ帳に書かれている有馬山椒を使った料理を再現したい、と考えたのです。

品種

金井さんが、六甲山中に有馬山椒の木を探しに出かけてたどり着いたのは、市場に出回っている朝倉山椒とは明らかに違う香りを持つ山椒の木でした。そこで、先端部分を採取し調査したところ、レモンのような香り成分シトロネラールが強く、固有の品種といえることが明らかになりました。

食べ方

有馬山椒の代表的な食べ方は、有馬煮・有馬焼・佃煮です。有馬煮は、ホタルイカや播磨アサリなど神戸近海で採れる海の幸を実山椒で煮付けた料理。有馬焼は、実山椒や粉山椒で風味づけをした肉や魚のグリル料理で、タレに漬けた鶏を刻んだばかりの実山椒と炒め合わせたり、さんまの塩焼きに粉山椒をふりかけるなどして食します。山椒は、花、実、葉、そして樹皮にそれぞれ異なる食感と風味があり、佃煮として最も高級とされるのは花を使ったもの。春先の数日間しか採れない花を佃煮にすることで保存し、大切に食べています。