「この店は俺と同い年やねん。」
そう言ってニカッと笑う2代目オーナー、御才86歳。
始業時間はきっかり7:15。朝日に照らされる岡本の街、緩やかな坂の途中にある半地下の作業場で、パン職人の朝が始まります。
この店の味に惚れ込んで、遠く九州から修行に来たという女性職人、授業が始まる時間までのアルバイトだという近くの甲南大学に通う学生さんも手伝って、全長3mほどにはなりそうな巨大な生地から、次々と種類の異なるパンが生まれてゆく光景は小さな個人店の作業場であることを忘れてしまいそうになるほど。この店がいかに人気店であるかを伺わせます。
創業以来のこだわり、
それは人の手で作るということ。
小麦粉の配合、水分のバランス、発酵の度合い、湿度温度の管理、そして手ごねの加減。
どれを取っても人の手の感覚に勝るものはないのだと、オーナーは語ってくれました。
釜に火を入れ350度ほどになるまで熱する。まさにここらからが時間との勝負で、温度計と、発酵のタイミングを見計らい、適温のうちに即座に熱された窯へ几帳面にパンを並べ、レンガの余熱で焼いていく。
まさに過酷とも言えるような作業と日々向き合うフロイン堂のパン職人たち。
そのパワーの源はどこから来るのだろうとこっそり尋ねて回ったら、
「お父さん(オーナー)の人柄が大好きで。」と教えてくれました。

お店の歴史
フロイン堂の代名詞とも呼ぶべきレンガ窯は、創業した後、昭和19年には存在していました。戦争でしばらく使えない時期もあったとのことです。「ここからちょっと東に行ったところ、芦屋の手前に配給のための食事を用意する場所があって。そこに同業者たちが集まって合同で調理をした。そんな時代がありました。」 とお話いただきました。
10年前までは薪を使って火を入れていたのだそう。
松が一番いい、松ヤニのおかげで加熱にも適していた。だんだんと松が手に入らなくって、クヌギを使う様になった。今はクヌギも手に入らない。それでガスに変えたという。できることならもう一度、薪で焼きたいと思っているのだとか。お客さんは味に違いはないと言ってくれるそうだけど、「やっぱり焼いてみると加減がどうしても。」と。
日々頭を悩ませるのは焼き加減だけではない。
作業中、特に目立っていたのは幾度と時計を確認していたこと、それから随所に時計が置かれていたこと。日々の決められたルーティーンの中で、「この工程がいつもよりも早いぞ、どうやら焼き時間も減らした方が良さそうだ」・・恐らくそのようなその日その場の指針を、何度も何度も確認しているようだった。
「小麦は農作物でしょう。だからいつ収穫されたものか、いつ製粉されたのかによっても違う。小麦粉のロットナンバーでもパンの出来が違ってくるほど。昔は紙袋じゃなくて、麻の袋で小麦を背負って帰ってきた。背負った時の重みや感触で、これはいい粉だと分かるなんて、親父(先代)は言ったもんだよ。」

お勧めメニューの紹介
1番の人気はなんと言ってもやっぱり食パン。
取材中も、2本3本とまとめてお買い上げになるお客様がたくさんおられました。
焼きあがった食パンを取り出す側から、パリパリっと固そうな音を立てていて、ハード好きにはたまらない存在。
小麦の優しい味わいをしっかりと感じられる、まさに本物と呼ぶにふさわしい、そんな食パンです。1つひとつの形が少しずつ違っているところも、手作りならではの美味しさのポイントかもしれません。
パンの種類によって、焼き上がり予定時間が決まっています。また、その日の天候などによって焼き上がり時間が前後することもあるとのこと。
一例)
・11:00~
あんドーナツ190円/ぶどうドーナツ160円/カレーパン230円
・11:30~
くるみパン 大520円 小240円 / 田舎パン 大740円 小360円
・14:00~
食パン(1回目) 1本 840円/ 2分の1本 420円/3分の1本 280円
・15:00~
ビスケット 10枚入り700円/5枚入り350円

お店のPRポイント
時代に合わせて、地域の食卓を支えてきたフロイン堂。
オーナーこだわりの焼きたての手ごねパンは、バタートーストでお召し上がりいただくのが最高です。カリッとした香ばしい音、奥深いバターの味わいに、「こんな美味しいパンは生まれて初めて食べた」と驚く人も少なくないそう。
名物の食パンは、毎日14:00と16:00の2回、焼きたてを1本840円(3分の1本280円~)で提供しています。近頃は、電話での予約販売で、ほぼ完売してしまう日も多いのだそう。ぜひご予約の上、ご賞味ください。





フロイン堂
- 所在地
- 神戸市東灘区岡本1-11-23 阪急岡本駅から3分
- 連絡先
- 078-411-6686
ご不明な点があれば、直接お店にお問い合わせください