常連のお客様が、自宅の玄関みたいにフラッと入ってきて、
台所で冷蔵庫を開けるように冷蔵ケースを覗き込んで、一品二品おかずを取り出して、「(ごはん)小と豚汁」。それだけ言うと席に着く。温められたおかずとツヤツヤご飯と湯気の上がる豚汁が載ったお盆が目の前にすっと。なんだかウチの家の食卓みたい…そんなデジャブ感。夜勤のお仕事帰りの人、近所の企業の団体さん、演芸見た帰りの人、色んな仕事や色んな暮らし方のお客さんが、思い思いに入ってきて、普通にご飯を食べて、さりげない会話を交わす人もいるし、ほとんど話さずに食べてスッと帰っていく人もいる。みんなそれぞれに絶妙な「普通」の感覚。「それが大事。それがここの持ち味やから」とお母さん。 火事で 4 年ほどお店閉めておられた時、再開を願ったご主人 が大切にしてこられた「お客さんは家のご飯みたいに安心して食べたいものを食べに来てくれるから、普通のものを作りたい」という気持ちはお店の皆の願いとして、今日も数々の美味しそうな料理たちになって、暖簾をくぐる私達を待っていてくれる。「ただいま」 、なんだかそう言いたくなるお店です。

お店の歴史
昭和 28 から 29 年に創業、丸一の名前の由来は、創業者の お兄さん「はじめさん」の「一」の字から。今店頭に立つお母さんの代になったのが昭和 34 年。「昔はウチみたいな飯屋 というか定食屋はね、この界隈にいっぱいあったんよ。中でもうちは古い方やったけど。そのころは賑やかで、松竹座の人とかも来てくれてた。最近は定食屋の数もドンドン減ってきて、ウチが一番古くなった。この頃は街もずいぶん様変わって、人通りも変わってきたけど、ウチみたいに変わらん店 があってもええかなと思ってる。」 震災や火事を乗り越え、移り変わる新開地の街を、周りの人 達の胃袋をいつもどおりに満たしながら 60 年余、静かに見 守っている丸一食堂の暖簾に、「江戸時代から地域に続く飯 屋の伝統」を引き継ぐ気概のようなものを感じます。

お勧めメニューの紹介
推薦者のイチオシの一品は「鯖煮」。一皿 300 円(税込)。 ツヤのある煮汁、というか、このツヤ感はタレというべきか、飴色の汁で照り映える肉厚の大きな鯖が一切れ。箸を入れると、中までしっかり煮染められた身からジンワリと脂が滲み出てきて、インスタ映えとか関係なく、絶対美味しそうな瞬間。そのまま食べても美味しいけど、ご飯にのせると、ご飯と鯖煮の無限ループへ。鯖の血合が若干苦手な私でも、血合すら残したくないほどに抜群に合う。お上品じゃなくても、皿の中にある小さな身まで残さず摘んで食べたくなる、そんな美味しさ。なんでも、この煮汁は追い足し追い足しで鯖を炊いてきたものだそう。一朝一夕には出せない味、店とずっと歩んできた 「店の歴史であり財産」の一つかも…とにかく美味しい。

お店のPRポイント
「いつまでもこうやって、お客さんが普段のままで気軽に来てくれるというのがウチの店らしさかな。」といってお母さんはニッコリ。「普通の」感じで、自分たちなりに長く通ってくれるお客さんをいつもどおりに迎えたいという気持ちが、「また来よう」というよりも「また来ちゃう」安心感に つながっています。

丸一食堂
- 所在地
- 神戸市兵庫区新開地 1-2-1
- 連絡先
- 078-576-2408
ご不明な点があれば、直接お店にお問い合わせください